『タイタニック』が描いた「永遠の一瞬」 ジェンダーの時代では不可能な号泣ラスト

2026/09/11 12:00配信【サイゾー】

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「あなたがどこにいても あなたへの想いは忘れない」


 セリーヌ・ディオンが歌う主題歌「My Heart Will Go On」が大ヒットしたのは、ハリウッド映画『タイタニック』(1997年)です。


ディカプリオ、22歳の輝き


 レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが共演した恋愛&パニック超大作として有名です。号泣もののエンディングを見直すために劇場にリピートする観客が殺到し、世界興収は20億ドルを超えるメガヒット作となりました。


 9月11日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)は、いよいよタイタニック号が沈む『タイタニック』後編がオンエアされます。日本語吹き替えはSFアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の渚カヲル役で人気の声優・石田彰、洋画の吹き替えの多い冬馬由美という顔合わせです。


 今週は劇場公開時から論争を呼んだラストシーンについて考察したいと思います。


大巨人が海に沈むとき


 1914年4月14日の深夜、大西洋を航海中だった豪華客船タイタニック号は氷山に衝突し、浸水が始まります。事故からタイタニック号が完全に沈没するまで、わずか2時間40分でした。ジェームズ・キャメロン監督は人間ドラマはさておいて、タイタニック号の沈没シーンに精力を注いでいます。後編の主人公はタイタニック号そのものと言っても過言ではありません。


 タイタニックの名前の由来は、ギリシア神話に登場する巨人族のタイターンです。これほど巨大で、しかも最新の安全設計がされている船が沈むはずがないという過信が、船員や乗客たちにはあったようです。美観をそこなうという理由から、甲板に備えられた救命ボートの数も少なく、救命ボートに乗れる人数は限られていました。


 徐々にパニック状態になっていくわけですが、それでも救命ボートに乗せるのは「女性と子どもを優先」という紳士的な行動規範が取られました。船長からの指示だったそうですが、うまく伝わらずに「女性と子どもだけ」救命ボートに乗せ、余裕があるまま海面に降ろされたものが多かったようです。もっと冷静に対処できていれば、救えた命は多かったはずです。


 パニック状態に陥った閉鎖的環境の怖さを感じさせます。


モルガン財閥をめぐる都市伝説


 そんな中で、楽団員たちは少しでも気持ちが落ち着くようにと、甲板で演奏を始めます。普段は一等室のお金持ちを相手に演奏していた彼らは、最後に開かれた音楽を奏でることになります。このシーンで涙した人も多かったようです。


 この楽団員のエピソードは実話で、最後まで演奏を続けた楽団員たちはお亡くなりになったそうです。


 一方、タイタニック号の悲劇から運よく逃れた人物もいます。モルガン財閥の創立者であるジョン・モルガンです。タイタニック号の実質的なオーナーでした。


 当初は、ジョン・モルガンもタイタニック号に乗船する予定でしたが、直前になって取り止めています。そのためタイタニック号事件は、巨額の保険金を狙った陰謀説が唱えられることにもなりました。


強い女が大好きなキャメロン監督


 肝心の主人公であるジャック(レオナルド・ディカプリオ)とローズ(ケイト・ウィンスレット)は、どうなったのでしょうか?


 ローズの婚約者キャル(ビリー・ゼイン)から、ジャックは宝石と婚約者の二重の泥棒の疑いを掛けられます。手錠をはめられたジャックは、船底に近い船室に監禁された状態に。浸水が始まり大ピンチに陥ったジャックを救うのが、斧を持ったローズです。


 ジェームズ・キャメロン監督は『ターミネーター』(1984年)のリンダ・ハミルトン、『エイリアン2』(1986年)のシガニー・ウィーバーなど、強い女が大好きなんですよ。


 ここからは感動のクライマックスへ向かって一直線です。ローズは救出ボートに乗ることができたにもかかわらず、船が沈む最後の瞬間までジャックと共に過ごすことを選択します。残された時間はせいぜい数十分でしょう。それでもローズは、平穏な人生よりもジャックとの愛にすべてを捧げることを覚悟します。


 一瞬は永遠になる。そんな言葉が脳裏に去来する忘れがたいシーンです。


 恋愛は美しく燃え上がったとしても、永遠に続くことはありません。ローズもジャックも、そのことに気づいていたのでしょう。沈みゆくタイタニック号で、永遠の愛を誓うジャックとローズでした。


『タイタニック2』の可能性は?


 タイタニック号はついに真っ二つに割れ、ジャックとローズは冷たい夜の海に投げ出されます。海面に浮かぶ木製のドアを見つけ、懸命にしがみつく2人でした。


 先週も触れましたが、この頃のディカプリオはまだ少年っぽいあどけなさが残っており、今と違って細身なんですよ。一方のウィンスレットはガッチリした体型です。寒さに震える細身のレオさまが自身を犠牲にして、体格のいいヒロインを救うわけです。


 公開当時も「ローズがもう少し場所を譲れば、ジャックも生き延びたのでは?」という声が少なくありませんでした。また、ジェンダー平等の考え方が一般化してきた現代では、男性が自らを犠牲にして、女性だけを生き延びさせるというラストシーンは脚本段階で却下されるのではないでしょうか。


 言ってみれば『タイタニック』は現在では企画すること自体が難しい、前時代的な号泣映画なわけなんです。でも、観ると多くの人が泣き出してしまうんです。


 海に消えていったジャックが甦るという『タイタニック2』のフェイク予告動画が話題になったこともあります。ファンがジョークで制作した動画ですが、やたら続編ものを乱発する今のハリウッドならヒットが見込めれば、平気で『タイタニック2』を企画してしまいそうです。


「それをやっちゃあ、おしまいよ」


 そう思うのは自分だけではないはずです。もしも『タイタニック2』が制作されたら、それこそハリウッドという映画界の大巨人が海に沈むときじゃないですかね。


ネットミーム化した「おじさん」の正体


(文=映画ゾンビ・バブ/映画ウォッチャー)


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